労働者の同意なく、損害賠償金を天引きするのは違反です!
労働基準法
第16条 賠償予定の禁止 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
就業規則で損害賠償額を決めてあるのは、労働基準法違反です。
第17条 前借金相殺の禁止 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
第24条 賃金の支払い 法令に別段の定めのある場合又は従業員代表との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことが出来る。
会社は、会社に「損害」をかけたからといって、勝手に給料から控除してはいけません。
労働契約法
第8条 労働契約の内容の変更 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
労働者の同意のない、賃下げ、賃金カットはできません。
第一歩:すぐに同意しない、合意書等にサインしない。
支払え、と言われても、直ちに全額払わないといけないものではありません。
「給料から控除する」などの同意書、弁済書にサインを求めらても、すぐに同意しないで、相談してください。
労働者が無過失、会社側の指示命令に問題があったり、過重労働など会社に違法行為があれば、尚更、支払う必要はありません。
第2歩:損害賠償請求は、訴訟で確定、または合意しなければ
支払う必要はありません。
裁判では労働者の過失や程度、損害発生の事実などを判断し、労働者の責任を否定したものもあります。
- つばさ証券事件 (東京高裁平成14年 5月23日)
- 仁成会事件(大阪地裁平成11年9月)
- 松山石油事件(大阪地裁平成13年10月19日)
- モリタ事件(大阪地裁平成13年1月26日) など
労働者に負担を負わせる場合にも、負担割合があります。
負担割合は、以下の要素で決められます。
- 労働者が故意であるか、過失の有無、程度
- 労働者の地位、職務内容、労働条件
- 損害発生に対する使用者の指示内容の適否、保険加入、事故予防、リスク分散など
- 使用者の教育、チェック、ノルマ、過重労働、長時間労働、リスク管理
裁判所が認めた過失割合(2分の1から4分の1)
- 労働者の過失の程度
- 5% K興業事件
- 20% 富隆運送事件
- 25% 大隈鉄工所事件
- 35% 秋田運輸事件
故意に損害を発生させた事例や、犯罪事例はこの限りではありません。
第3歩:報復が怖い時、断っても会社が賃金から控除した時、支払うまで嫌がらせがある時、労働組合を結成して交渉しよう。
労働組合は相談を受け、ご本人と相談しながら次のような要求を考えます。
- 損害賠償支払いの必要性
- 過払い分の返却
- 就業規則の点検
- 事故など発生時の労使間ルールの作成