
1日8時間労働。
最低限の人間らしい生活の基本です。
割増賃金は長時間労働の雇用主側へのべナルティです。
労働基準法第37条 割増賃金支払い義務。
労働時間の基本(労働基準法32条で定められている時間)
例外(変形性労働時間、フレックス、裁量労働制など)を除き、この時間を超えて働くと割増賃金が必要になります。
1日の労働時間 8時間 |
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週の労働時間 40時間 |
法定休日 週1日 |
深夜 夜10時から早朝5時 |
割増賃金支払い義務に関する典型Q&A
Q うちの業界では、残業代など払わないことになっていると言われました。 |
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A どんな業界、どんな仕事、どんな会社、どんな雇用身分でも、割増賃金を払わないと法律違反となり、罰則を課せられます。 |
Q 1日7時間の所定労働時間ですが、8時間を超えないと残業代は払われないのですか? |
A 労働基準法では1日7時間を超えて8時間までは、時間単価を支払い、8時間を超えてから割り増しを払うことが最低基準だと決められています。最低基準なので、労使間交渉、または就業規則で所定労働時間を超えたら割増賃金を支払うと決めることは可能です。 |
第1:未払い残業代に必要な資料。
給与明細は捨てないで!

賃金の時効は2年です。
割増賃金計算に 必要な資料は以下の通りです。
雇用契約書 |
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就業規則 |
労働時間の記録 |
給与明細 |
第2:未払い残業代発生の原因。
組合に相談があった事例から、典型的なものを列挙すると次のようになります。こんなにたくさんありますから、確認してみる必要があります。
第3:残業代基礎計算。
時間単価の計算方法は法律で決まっています。

月額賃金の場合の割増賃金単価計算方法(労働基準法規則)
(基本給+手当(下記の手当は除く))=1ヶ月あたりの残業計算基礎支給額
- 一律でない(住宅手当、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当)
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
((365日-休日日数)✖︎1日の所定労働時間数)÷12ヶ月)=1ヶ月あたりの所定労働時間数
1ヶ月の残業計算基礎支給額÷1ヶ月あたりの所定労働時間=割増賃金のための基礎時間単価
歩合給の場合の割増賃金単価計算
歩合の算定が1ヶ月の売り上げである場合
1ヶ月の歩合給総額÷1ヶ月の総労働時間時間=歩合給の割増賃金のための基礎時間単価
歩合給でも、割増賃金は発生します。
第4:残業、深夜、休日労働の割増率
最低基準も法律で決まっています

基本の割増率
1日8時間を超えた時間 時間単価✖︎1.25 |
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週40時間を超えた時間 時間単価✖︎1.25 |
法定休日に働いた時間 時間単価✖︎1.35 |
深夜に働いた時間 時間単価✖︎1.25 |
月60時間を超えた時間 時間単価✖︎1.5(中小企業は2023年4月1日から) |
歩合給の場合の割増率
1日8時間を超えた時間 時間単価✖︎0.25 |
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週40時間を超えた時間 時間単価✖︎0.25 |
法定休日に働いた時間 時間単価✖︎0.35 |
深夜に働いた時間 時間単価✖︎0.25。 |
月60時間を超えた時間 時間単価✖︎1.5(中小企業は2023年4月1日から) |
1日7時間が所定労働時間の場合に8時間を超える労働をした時
7時間から8時間まで1時間 時間単価✖︎1 |
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8時間を超えた時間 時間単価✖︎1.25 |
以上が労働基準法に定められた計算方法です。
就業規則これを上回る規定がある場合、就業規則に基づき計算します。
反対に、就業規則が上記を下回った時、就業規則内容は無効になります。
第5:「労働時間」が法定時間を超えたら、割増賃金の発生です。
タイムカードの写しがある場合
実際の労働を始めた時間、終えた時間の記録を残しましょう
どの上司のどのような残業指示で仕事をしていたか記録を残しましょう
日報、タコメーター、パソコン記録の場合
出社時間、始業時間、帰社時間、終業時間を記録しましょう
労働時間記録簿がない場合
労働時間を記録していないだけでも労働基準法違反です
毎日の始業、休憩、終業時間をノートなどに記録しておきましょう
2020年3月までの残業代の時効は2年です。
2020年4月に支払日の到来した残業代から時効が3年になります。
手待ち時間、待機時間は労働時間です。
「宿直」という名称でも、労働した時間、待機した時間は対価の支払いが必要です。
第6:「労働時間」の特例と運用要件
労働時間管理の例外が労働基準法で以下の通りに定められています。
1ヶ月単位の変形性労働時間 |
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1年間単位の変形性労働時間 |
事業場外みなし労働 |
企画裁量型労働 |
専門業務型裁量労働 |
フレックスタイム制 |
固定残業代 |
管理監督者と割増賃金 |
大企業であっても間違った運用をしている会社がたくさんあります。
間違った運用をしている会社では、例外規定が無効になり、未払い残業代が発生します。
無効の場合の計算方法は、基本の計算方法になります。
第7 請求時効を知ろう
期間:何もしなければ請求時効は2年です。
労働基準法により、退職金を除く賃金の請求時効は2020年3月分までが2年です。
2020年4月分から3年になりました。
時効の範囲内の未払い残業代は全て請求できます。
ただし、請求を行い、半年以内に訴訟を提訴した場合、その半年分を時効にプラスして請求ができます。
つまり、残業代請求をして半年間交渉をし、まとまらなければ訴訟に移行という方法が使えます。
労使関係は交渉でお互いの合意が基本です。
いきなり訴訟前に、交渉してみましょう。
時効の止め方:時効は止めることが出来ます。
- 雇用主が未払い残業代の存在を認め、支払いを約束した時。
- 訴訟提訴
- 差し押さえ
この3つの方法で時効を止めることができます。
労働基準監督署への申告では時効は止まりません。
労働審判申立は訴訟では無いので、時効は止まりません。
請求の方法:請求した事実と請求した日付を証拠に残しましょう
- 請求者指名
- 支払い口座
- 支払日
- 請求金額
この4つを書いて請求しましょう。
手渡しする場合
必ず割印をして、控えを残すととも、受け取りの署名、日付を書いてもらいましょう。
郵送する場合
内容証明郵便で出すと、相手方が受け取りを拒否しても、請求した事実が残ります。
請求時効の証拠として使いますので、裁判所や労働基準監督署などの第3者に出しても大丈夫な形式で出しましょう。